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豊田悠先生&宮村優子音響監督オフィシャル対談インタビュー

──まずは豊田先生、アニメ化が決まったときの気持ちをお聞かせください。
豊田 アニメ化は漫画家になる前からの夢だったので、純粋にすごく嬉しかったです。それまでに読者さんからも、スクエニの担当さんからも「アニメになったらいいね」と言っていただいていたので、みんなの夢が叶った嬉しさもありました。

──そして宮村さん、音響監督として作品に参加されるのはかなりお久しぶりですよね。
宮村 十数年ぶりでしょうか。当時のテクノロジー的に家に仕事を持って帰ることが難しく、編集室にこもりきりで作業するしかなかったので、子育てとの両立が難しくて。子育てが落ち着いて再びやりたいなと考えていたときに、ちょうどこの作品のお話をいただきました。私、実は『チェリまほ』の大ファンでして。
豊田 えっ、ありがとうございます。
宮村 ファンだからこそ、自分が参加していいのかというプレッシャーもあったのですが、ぜひやらせていただければと思ってお受けしました。
豊田 私も宮村さんのお声を子供の頃から聞いていたので、参加してくださると最初知ったときは本当にビックリしました。音響監督の復帰作品に選んでいていただいて、すごく光栄です。

──宮村さんはもともとファンだったということですが、原作のどのようなところに魅力を感じますか?
宮村 世の中にはさまざまなBLがありますが、私は少女漫画のようにものすごくキュンとする、「この二人さえ幸せになってくれれば、私は頑張れる」という作品が好きでして。『チェリまほ』はまさにそのド真ん中で、豊田先生は何でこんなにもキュンキュンさせるのがお上手なのかと思うばかりです。こんな素敵な作品を生み出してくださって、本当にありがとうございます!
豊田 わ~描いていてよかったです。ありがとうございます。

──アニメ化にあたって、豊田さんとスタッフではどのようなやり取りがありましたか?
豊田 顔合わせのときに、アニメサイドのスタッフさんたちが「こういうアニメにしたいんです!」と、熱く語ってくださったんですよ。そこで奥田佳子監督が作品に愛情を持ってくださってることがすごく伝わってきましたので、安心してお願いできましたし、こちらもできる限りのことをしたいなと思いました。
宮村 実際に制作がスタートしたとき、豊田先生をはじめとした原作者サイドの皆さんの作品への愛と、奥田監督の原作愛のぶつかり合いを感じましたね。それが本当にいい意味でのぶつかり合いで、作品にとってかなりプラスになったと思います。原作者サイドの皆さんにご協力いただいて、いろいろと言ってくださるからこそ、私たちアニメサイドが拾っていけるものって、すごくたくさんあるんですよ。
豊田 そう言っていただけて安心しました。

──アニメサイドは、具体的にどんなアニメにしたいと考えられていたのですか?
宮村 音楽面で言うと、まず監督の中でイメージしてるテーマソングがあって、それがロマンチックなピアノのソロ曲なんですね。音楽打ち合わせのときも、作曲家さんにそれを聴いてもらって作っていただきました。キュンとして切ない、美しいものというイメージですね。分かりやすく言うと、韓国ドラマやトレンディドラマみたいな感じかな。
豊田 実は、私もトレンディドラマをちょっと意識して描いているんですよ。
宮村 良かった!じゃあぴったりですね!
豊田 新しい恋愛というより、ちょっとベタなトレンディドラマっぽいほうが面白いかなと思って描いていたので、ピッタリでしたね。

──キャスティングについてもお聞かせください。まず、安達はどんなイメージで探されたのですか?
豊田 普通のサラリーマンであることが一番で、そのイメージに合う人を探していったのですが、小林(千晃)さんの声を聞いたときに「安達はこの人がいい」となりまして。それは私だけじゃなく、もう満場一致でしたね。
宮村 実は安達より先に、黒沢をキャスティングしたんです。というのも、役者さんの年齢感で作品の雰囲気がかなり変わるので、そのバランスとしてどの辺りの黒沢を持ってくるのか、まずそれを決めようとなって。それで黒沢が鈴木(崚汰)さんに決まって、安達は満場一致で小林さんの名前があがり、二人を並べてみたところすごく合うなということで、このキャスティングになりました。

──黒沢役の鈴木さんは、はじめ柘植役でテープオーディションに参加されていたそうですね。
豊田 黒沢でオーディンションに参加された皆さん、本当にイケボでお芝居もお上手だったのですが、たまたま別作品の鈴木さんの声を聞いたらそれがすごく黒沢のイメージに近かったので、スタジオオーディションで黒沢も演じていただきました。
宮村 エリートサラリーマンであるところを、監督はものすごく大事にしていたんですよね。ストーリー上、コメディに振る場合もあるけれど、その中でも育ちの良さと言いますか、上品さを失ってほしくない。それを鈴木さんにお伝えしたら、「それがほしかったんだよ!」というお芝居をバッチリだしてくださりました。

──柘植役の古川慎さんは、どの辺りが決め手となったのでしょうか?
豊田 古川さんは、インテリだけれどちょっとカッコ悪いところもあって、それが可愛いという柘植のイメージにピッタリでした。そして当たり前だけれど、声がいい!(笑) いい声の人がバタバタしているのがすごく可愛いですし、とくにうどんと一緒にいるときがめちゃくちゃ可愛いので、アニメでぜひその可愛さを堪能していただきたいです。
宮村 柘植はコミカルなシーンも多いので、ユーモアのセンスがある方がいいなと考えていました。その点、古川さんはすごく信頼のおける方なので、安心して任せられましたね。

──では、湊役はどのように? 
豊田 湊は青年と少年の間にいるキャラクターなので、大人の男過ぎず、子供過ぎない中間の声をイメージしていました。それでオーディションで聴いた佐藤 元さんが一番ちょうどいい塩梅の若さで、尚且つ反骨心と言いますか、可愛いだけじゃない表現がみずみずしかったので、「この人がいい!」と希望を出しました。
宮村 オーディションでも可愛らしい感じで作られている方が多かったのですが、原作者サイドは「違います、湊はヤンキーっぽいんです」とおっしゃっていましたものね。佐藤さんはその感じがすごく出ていました。
豊田 湊に関しては、コミックス未収録の話も設定をお伝えして、実はこういう過去が……というものも踏まえた上で演じてくださっています。

──豊田さんはアフレコを実際にご覧になっていかがでしたか?
豊田 シンプルな感想になるのですが、すごく楽しかったです。テストの後、スタッフがいるブースでディスカッションして、それを宮村さんがまとめて声優さんにお伝えして、もう一度やるとイメージ以上のものが返ってくるんですよ。声優さんもすごいのですが、宮村さんの指示が「どう伝えたらこんなドンピシャに伝わるのだろう」というくらい的確でした。
宮村 ありがとうございます。
豊田 一番覚えているのは柘植のセリフに対して、私が「もうちょっと運動神経が悪い感じの喋り方ですね」と、ぼんやりしたことを言ったんですよ。そうしたら宮村さんが「わかりました!」と、古川さんに何かを伝えに行って、もう一度リハをしたら本当にちょっと鈍くさい感じのセリフ回しになっていて。あれは本当にすごかったです!
宮村 それは古川さんのお芝居がすごいんですよ(笑)。『チェリまほ』の現場は、スタッフ側のブースがこんなに白熱することなんてないぞというくらい、皆さんが意見を出してくだりますし、それがいいものに繋がっているなと思います。
豊田 うどんが喉を鳴らすシーンも、猫を飼っている方が「いや、それはちょっと違うな」とこだわられていて。あれだけの人数で真剣に猫のディスカッションをやっているのも、すごく楽しかったです。
宮村 うどんと言えば、音楽打ち合わせのときに「劇判でうどんのテーマを作ってください」とお願いしたら、作曲家さんも猫を飼っていて、めちゃくちゃ乗り気でうどんのテーマを作ってくださったんですよ。柘植と湊のシーンについている曲は、実はそのうどんのテーマから発生した編曲になっているんです。
豊田 すごい! 本編でしっかりと確認してみます!

──安達と黒沢のやりとりでは思わずとキュンとしてしまうセリフや展開も多いですが、実際にアフレコをご覧になってキュンとした部分はありましたか?
豊田 安達が黒沢に好意を寄せられていると分かって、「黒沢が俺のことを好き?」と動揺する小林さんの声の揺らぎが素晴らしかったです。ものすごくキュンキュンしました。初々しいリアクションの中に、ちゃんと30歳男性っぽさもあって、グッときましたね。
宮村 そうした揺らぎをはじめ、小林さんは本当に安達役にピッタリでしたよね。鈴木さんも、黒沢の表には見えない内面の暴走気味な部分が素晴らしかったですし。
豊田 内面がそれなのに、外見はすごくエリート然としているところが面白いですよね。たまに雄みを見せる場面では、鈴木さんの低音のいい声がかなり刺さっていてよかったです。

──宮村さんはディレクションをしないといけないので、キュンとしている暇はなさそうですが……。
宮村 いや、キュンとしまくりですよ。むしろキュンとしなかったら「もう一回!」と言うので(笑)。いろいろなディスカッションを経て、再度やってもらったときにこれぞというのが来た時は、音監席で「ありがとう……ッ!」となっています(笑)。

──アニメ化にあたって、ぜひ注目してほしいシーンやポイントを教えてください。
豊田 とくに楽しみにしているのは、安達と黒沢が2人で出かける回。アニメならでは面白い演出と言いますか、歌がお上手な声優さんだからこその演出になっています。脚本とコンテの段階でかなり面白かったので、早く完成した映像を観たいですね。
宮村 CM前に入るアイキャッチにも注目してみてください。CM前と後で同じ画だけれど隠されているところがあって、CM後はネタが全部見えるという仕掛けになっています。あとはエンディングテーマもぜひ聴いていただきたいですね。
豊田 小林さんと鈴木さんが歌ってくださっているんですよね。以前、『チェリまほ』のアイドルパロをお遊びで描いたことがあるのですが、本当にそれが実現したみたいになりました。

──もし自分が、安達のように周りの人の心が読めるようになってしまったらどうしますか?
宮村 この設定、豊田先生にお聞きしたかったんですよ! 「30歳まで童貞だと魔法使いになれる」というのは昔からありましたけれど、その魔法を「人の心が読める」にしたのは、やはり人の心を読んでみたいと思うことがあったのですか?
豊田 いや、ないです。
宮村 即答だった(笑)。
豊田 実際、恋愛するうえで心が読めたらかなり有利じゃないですか。でも、恋愛経験がないと、それが逆に不利にもなるだろうなと考えたんです。そのジレンマがラブコメの仕掛けとして面白いかなと思って、この設定にしました。触れるときだけ読めるようにしたのは、好きな人が近くにいるときは、基本的に他のことを考えないと思うので、設定が一番活かせるかなと。宮村さんはこの魔法、欲しいですか?
宮村 うーん、犬を飼っているので、犬の気持ちを分かりたいとは思います。
豊田 それはいいですね!

──作中の設定としては、動物の声は読めないですよね。
豊田 そうです。でも、うどんは柘植の考えていることは分かっていると思います(笑)。
宮村 (笑)。

──放送を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
豊田 皆さんがずっと応援してくださったおかげで、こうしてアニメになりました。本当に感謝しています。応援上映みたいに応援できるラブコメを描きたいと思って、Twitter(現X)で連載していくことを決めた作品なので、TVアニメもぜひリアタイでテレビの前で一緒に応援してくださったら嬉しいです。
宮村 漫画には漫画の良さがあり、アニメではそれとはまた違ったキュンを体験できると思います。原作ファンの皆さまにもぜひアニメを観ていただいて、いっぱいSNSで呟いていただけたら、私もそれをリポストして一緒に楽しみたいと思いますので、よろしくお願いします!

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